12 |HELL’S FIRE -第12話- デスダスト‐墓守の小屋‐

墓守キッチョムのおとぎ話

HELL’S FIRE

第12話 デスダスト‐墓守の小屋‐


第12話 デスダスト‐墓守の小屋‐

薄暗く冷たい小屋の中は乱れていた。

確かに部屋に存在するものはあるべきところへ収められていたが、この部屋の空気がそう思わせるのだろう。

キッチョムは部屋の中を見渡した。幾世代にもわたり、墓守たちはこの部屋での生活を強いられた。

扉は自由に開き、自由に出入りすることができた。窓も開くことができる、外の新鮮な空気を部屋に入れることもできる。

しかしここは牢獄のようだ。そしてなぜか逃げ出したものはいない。

キッチョムは扉に目をやった。扉に古い傷がついている。

何者かが掻き毟った跡が残されていた。爪が割れ血の跡が黒く木の扉にしみこんでいた。

ベッドの柱には深く削られた痕、キッチョムはここに鎖でつながれた何かがあったと思っている。

そしてそれは墓守自身をつないだものであることも容易に想像できた。この部屋の黒く変色した汚れ…。そのすべてが血の跡であることも…。

天井の柱の張りにも無数の傷跡、首を吊ろうとしたのは何代目の墓守だろう…。

世界のどこかから連れてこられた凶悪な犯罪者たちはこの墓場で残りの人生をソルマントの墓守として過ごした。

先代の墓守のレギオンもまた犯罪者だ。彼はそのことを否定したことはなかったし、過去を語ることは一切しなかった…。

ただ、キッチョムは違った。

『お前は、ちがう…。お前は特別な存在なんだよ…』

レギオンはそう言った。彼は犯罪を犯したことなどなかった。人から恨みをかうことなく、この墓場でひっそりと生きてきたのだ。彼は物心ついた頃からこのソルマントにいた。孤児だった。


レギオン…、もし僕が特別な存在だったとしても、それは僕にとってどんな意味があるの?

いま、キッチョムはそうレギオンに問いたかった。僕はルカのように偉業を成し遂げるような存在じゃない。それに偉業を成し遂げたとしても、僕に目を向けてくれる人はいるの…?僕に目を向けてくれる人なんていないだろう…。僕はソルマントの墓守だ。


たとえ墓守の歴史の中で特別だとしても、僕はこの世界でもっとも孤独な存在だ。ねえ、レギオン、だれが僕に温かい目を向けてくれるの?


僕には父も母もいない。もし父親と呼んでいいなら、レギオン、あなたが僕の父親だ…。キッチョムはマントを脱ぎ壁にかけた。

黒く艶のある重いマント、レギオンが残したマントだった。ぼんやりとマントを眺める。手を伸ばしてマントに触れた。


でも、あなたはもういない……。

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